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右腕を轢過され、神経叢損傷により右腕が全く動かなくなった事例
はじめに
福岡県在住の30代の自営業の男性が、歩行中、道路に倒れていたところを自動車で右腕を轢過されるという交通事故に遭い、右腕神経叢損傷によって、右腕が全く動かなくなってしまった事例
当事務所の活動
ご相談時、すでに後遺障害等級5級6号(右上肢機能障害)の認定を受けていました。
依頼者は自営業者であり、実際にはより多くの年収あったにもかかわらず確定申告書上は約130万円としか記載されていなかったことから、基礎収入の額が厳しく争われると予想されました。
また、依頼者自身が道路に倒れこんでいたところに起きた事故であり、被害者にも通常5割の過失が認められるケースであったため、過失割合が争点となることが予想されました。
実際、保険会社との交渉では、基礎収入と過失割合で折り合うことができず、訴訟を提起することになりました。
基礎収入
自営業者の基礎収入額は、通常、裁判においても、確定申告などの公的機関に提出した書類を前提に算出されます。
依頼者は、実際の収入額以下の金額で確定申告しており、総勘定元帳などの資料も作成しておらず、申告額以上の基礎収入を認めてもらうことがなかなか困難なケースでした。
そこで、当事務所は、通帳や領収書等の資料を提出し、具体的に売上額がいくらあること、依頼者の業種の経費率が一般的にはどの程度であること、同業者に比べても依頼者は経費率が低いことなどから、申告外の所得があるのは明らかであるということを主張しました。
また、依頼者の年齢、家族構成や日々の収支など実際の生活状況を主張し、確定申告書通りの金額では到底このような生活はできず、申告外の所得がある旨を具体的に主張していきました。
過失割合
本件事故は、依頼者自身が道路に倒れこんでいたために発生しました。
また、過失割合は基本的に加害者のみの主張(実況見分調書や供述調書など)を前提に判断されてしまいがちで、被害者にも大きな過失が認定される可能性がありました。
そこで、当事務所は、被害者が路上で倒れていることや、道路の幅、明るさ、交通量などの事故状況において、本件と類似する過去の裁判例を調査しました。
過去に被害者に有利に判断されたと共通項の多い事例を用い、「その事例との比較からしても、依頼者の過失割合を有利に判断すべきである」旨を具体的に主張しました。
訴訟経緯
判決が出る前には、通常、裁判官が当事者双方の生の声を聞いて、どちらの言い分が信用できるのかを判断するため、当事者尋問が行われます。
しかし、当事務所の方針では、本件では特殊な事情により尋問を行うと依頼者の精神的負担が大きく、依頼者の意向からなるべく尋問をしないことにしようと考えていました。
そのため、裁判官から和解案を提示してもらい、どのような判決が出るかを予測した上、当方で立証が足りていないと考えられる部分を積極的に追加しました。
原告を尋問しても事故状況が分からないため尋問の必要のないことなどを主張し、尋問をしない形でもこちらに不利にならないよう最大限努めました。
結果
逸失利益
基礎収入を、確定申告額である130万円を大きく上回る、524万9900円(30代男性の平均賃金)で認めてもらうことができました。
確定申告額130万円で計算された場合よりも、逸失利益だけで約3000万円増額されたことになります。
過失割合
一般に被害者の5割の過失が認められるケースでしたが、判決では4割の過失にとどめることができました。
賠償金額
結果として、判決では全損害を8641万円と認定したうえで、4割の過失相殺により、5695万円が認められました。
さらに、依頼者の方はご自身の保険で人身傷害保険に加入していたため、人身傷害保険・自賠責保険による保険金で約3000万円(保険金額満額)の支払いを受け、過失相殺で削られた4割(約3450万円)のほとんどをカバーできたことになり、結果的に全損害額に近い金額での解決ができました。
お客様インタビュー
―申告していた所得が低く、実際の所得が判決で認められるかが大きな問題点でしたが、判決で申告外の所得まできちんと認められました。判決までいった場合には、申告外の所得が認められず、和解案より獲得金額が大幅に下がるリスクもありましたが、良い判決をもらえて幸いでした。また、遅延損害金が付いたので、だいたい弁護士費用もカバーできたことになります。
よかったです。本当に、やっと終わったかなと思います。
―どのように弁護士を選んだのですか?
インターネットを使って妻と二人で調べました。色々と弁護士のホームページを見ました。
―特に当事務所を選んだのは、何か理由があるのですか?
ネットを見て、「ここなら」と思いまして。ここに相談に来たあとも、特に弁護士は探していません。
―しかし、必ずしもネットの情報通りということもありませんからね。弁護士の中には、全く面談をせずにメールと電話と郵送のやり取りのみという方もいらっしゃるようですし、そういったことに不満を感じて、弁護士を解任し、当事務所に来られたという方もいらっしゃいます。
そんなことがあるのですか?それはちょっと信じられないという感じですね。
―今回の件での感想はどうでしたか?
一番は所得のことですね。申告がものすごく低かったので計算が大変でした。ただ、弁護士さんには、将来のことを考えていただいて、帳簿がない中でも、あれがありませんか、これがありませんかって聞いてもらいました。少しでも資料を集めて、少しでも認めてもらおうという感じが伝わってきていました。
―申告外所得は認められづらいですから、通帳や領収書があったことが幸いでしたね。
そうですね。さすがに相手方の主張通りで計算されていたらもうどうしようもないという感じでしたからホッとしました。お金のことですけど、後遺症でいろいろと不自由になる以上、これからのためにはなくてはならないお金ですから。
―本当に、私たちの請求が認められてよかったですね。
長い間、ありがとうございました。
―ありがとうございました。
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