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獲得判例
たくみ法律事務所では、これまで数多くの交通事故の被害者の方からご依頼をいただき、解決に導いてきました。
その中には、最高裁判所で逆転勝訴した事例や、交通事故問題に特化した裁判所判例集である自動車保険ジャーナル(自保ジャーナル)に掲載される等、多くの判例を獲得しています。
このページでは、当事務所がこれまで獲得した判例をご紹介いたします。
令和4年3月34日、当事務所にご依頼いただいていた交通事故事件について、最高裁判所の判断が下りました。
結果は、福岡地裁・福岡高裁の判断が覆され、逆転勝訴となりました。(判例結果の詳細はこちら)
本件は、「消費者(交通事故被害者)にとって理解が難しい定型書式の協定(書面)を結ばされたがゆえに、協定がない場合に比べて受け取る賠償額が低くなってしまった事案に対して、その結果は不公平である」と、保険会社と争っていた事案でした。
≫ 最高裁で逆転勝訴!-人身傷害保険に対する弊所の活動-
同誌に掲載されるのは、従来の先例を覆す画期的な判決を得た場合など、全国の裁判所における判決でも特に注目に値する判決となります。
同誌には保険会社側が勝訴した判例も多く掲載されており、被害者側からすれば、勝つのに苦労した事案の判決が掲載されているともいえます。
ネット上では、複数の交通事故を扱う法律事務所が「交通事故に強い」「解決実績が豊富」といった文言が記載されている事務所が多いですが、相談者が客観的に、弁護士の実力があるのか判断がつきかねる場合もあるのではないでしょうか。
解決した事例が同誌に掲載されている事務所であることは、弁護士の実力が客観的に評価されたといえるでしょう。
今後も、より多くの知識・経験を得ることで、被害者本人とそのご家族の負担を少しでも取り除くことに尽力していきます。
掲載内容を一部ご紹介します
- 死亡事故の裁判において内縁関係の家族に対する慰謝料の支払いが認められた事例
- バイク事故の被害者が67歳までの労働能力喪失率35%が認められた事例
- 比較的軽微な交通事故による怪我が認められた事例
- 高次脳機能障害を負った17歳男子が50年間35%の労働能力喪失で逸失利益が認められた事例
- 裁判により当方の主張が全面的に認められ、有利な過失割合で解決できた事例
- 事故当時未婚の女性の逸失利益が兼業主婦としての金額で認められた事例
- 示談後の損賠賠償請求が認められた事例
- 後遺障害併合14級が認定され、5年間5%の労働能力喪失が認められた事例
- 酒気帯び運転による交通事故の被害者の慰謝料増額が認められた事例
- 被害者には過失がないと認められた事例
- 幼児の死亡事故で、裁判所基準を上回る2,800万円の慰謝料が認められた事案
- 事故前3年間の平均年収を基礎収入とし27年間の後遺障害逸失利益が認められた事例
新しい判例-⑩:交通(対人・固有慰謝料・損害額算定)・過失相殺(四輪車対歩行者)
戸籍上の身分関係が判明しない69歳A死亡による内縁の夫X及び同子Wの固有慰謝料を民法711条を類推適用しX800万円、W100万円と認定した
福岡地裁:令和2年11月26日判決
事件番号:令和元年(ワ)第2456号 損害賠償請求事件(確定)
判決要旨
①
戸籍上の身分関係が判明しない69歳女子Aが、片側1車線道路を歩行横断中、被告乗用車に衝突され死亡したことから、内縁の夫の原告X及び内縁の子の原告Wが固有慰謝料等を請求する事案につき、Xは、「少なくとも昭和54年5月にAと結婚式を挙げてから本件事故までの約40年間、Aと生計を共にしていたこと、Xは、Aに対し、何度か入籍を希望したがAが住民票等を取得することを拒んだために婚姻の届出をすることができなかったこと、AはXの親族からも夫婦として扱われていたことが認められ、これらの事実によれば、Xは、本件事故当時、Aはと事実上の婚姻関係にあり、Aの死亡により甚大な精神的苦痛を受けたものと認められる」ことから、「Xは、民法711条の類推適用により、固有の慰謝料を請求し得るものと解するのが相当である」として、「XとAは、少なくとも約40年にわたり事実上の婚姻関係にあったこと、XはAとの相続人ではなくAとの損害賠償請求権を相続することができないこと、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、Xの固有の慰謝料額としては800万円を相当と認める」と認定した。
②
Wの固有慰謝料につき、「Wは、Aとの子ではないが、幼い頃からXとAの実施同然に育てられ、Wが独立するまではAのと同居して生活していたこと、Wは、平成19年(当時30歳)に婚姻したが、本件事故当時も電話で連絡を取り合うなどAのと親子としての交流が続いていたことが認められ、これらの事実によれば、Wは、本件事故当時、Aのと事実上の親子関係にあり、Aのの死亡により甚大な精神的苦痛を受けたものと認められる」ことから、「Wのは、民法711条の類推適用により、固有の慰謝料を請求し得るものと解するのが相当である」として、固有慰謝料の100万円を認定した。
③
片側1車線道路を横断中のAの歩行者と被告乗用車の衝突につき、「本件事故の発生日時は、平成30年12月4日午後7時8分頃であり夜間に当たること、本件事故現場周辺は住宅街・商店街などに当たること、Aは本件事故当時69歳で高齢者に当たることが認められる」他、「被告車は、時速40キロメートルで走行していたと仮定しても衝突の3秒前(本件衝突地点から33.3メートル手前の地点)には仮想被害者を視認可能であったことが認められるが、実際に走行している車両からAを認識することはより困難であった」として、A歩行者の過失を2割と認定した。
新しい判例-⑤:交通(対人・後遺障害認定・後遺障害逸失利益)・過失相殺(四輪車対二輪車)
自賠責12級5号右鎖骨変形傷害等の併合9級認定の後遺傷害を残す48歳原告の右肩関節機能障害を自賠責同様10級10号認定し67歳まで35%の労働能力喪失で逸失利益を認定した
福岡地裁:令和2年10月2日判決
事件番号:平成21年(ワ)第1283号 損害賠償請求事件(本訴)(確定)・令和2年(ワ)第131号 損害賠償請求事件(反訴)
判決要旨
①
国道を大型自動二輪車で走行中、対向車線から転回してきた被告タクシーに衝突され、肋骨多発骨折、両膝関節打撲傷、右鎖骨遠位端骨折等の傷害を負い、自賠責10級10号右関節機能障害、同12級5号右鎖骨変形傷害、同14級9号前胸部痛等の併合9級後遺障害を残す症状固定時48歳給与所得者の原告の逸失利益算定につき、「原告の症状固定の診断に当たり、原告の両肩関節の可動域の測定がされたこと、自賠責保険の後遺障害等級認定手続においては、上記測定結果に関して「主要運動である外転・内転の可動域が健側(左肩関節)の可動域角度の1/2をわずかに上回り、かつ、参考運動である外旋・内旋の可動域が健側(左肩関節)の可動域角度の1/2以下に制限されている」との指摘がされたことが認められる」とし、「同手続きにおいて、原告の右肩関節機能障害が「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として別表第二10級10号後遺障害を認定し、「原告の後遺症である右肩関節の機能障害、右鎖骨の変形障害、両側の前胸部、肋骨左右の疼痛等による労働能力喪失率は35%とみるのが相当である」他、「原告は症状固定時48歳であったから、労働能力喪失期間としては、19年と見るのが相当である」として、事故前年収入を基礎収入に、19年間35%の労働能力喪失で認定した。
②
片側2車線の国道を走行中の原告自動二輪車と対向車線の第1通行帯から転回するために路外右折進出してきた被告タクシーの衝突につき、被告は、「転回しようと思った時点で、原告車両の進路であるa方向からの本件交差点の信号表示が赤色であったかのような主張をし、陳述書でも同旨を述べるが、同図面記載①地点から、本件交差点のうちa方面からの車線にある停止線付近の様子は見通せないものと認められるから、その主張や陳述は採用できない。したがって、原告が猛スピードで走行した事実も認めるに足りない」ことから、「原告の前方不注視は認めることができるが、本件の全証拠によっても、そのブレーキ操作に不適切があったとは認めるに足りない」とし、他方、「被告は衝突まで原告車両の存在に気づいておらず、対応車線を横切って路外に出るに当たり、対向車線の状況に対する注意を怠った過失があることは明白である」として、「本件事故の現場が市街地を通る片側2車線の国道であることも考慮すれば、当事者間の過失割合は、原告5:被告95とするのが相当である」と被告の過失を95%と認定した。
新しい判例-⑦:交通(対人・受傷認定・休業損害・素因減額)
X運転W同乗の原告乗用車と路外から右折進入の被告乗用車との衝突で衝撃が比較的軽微であっても原告らに頸椎捻挫等が生じないとまでは言い難いと原告らの受傷を認定した
福岡地裁:令和2年8月21日判決
事件番号:令和元年(ワ)第2714号 損害賠償請求事件
判決要旨
①
平成30年6月10日、男子原告Xは、片側1車線道路を妻の原告W及び子2名が同乗する乗用車を運転して走行中、右方の店舗駐車場から右折進入してきた被告乗用車に衝突され、原告らが共に頸椎捻挫、腰椎捻挫の傷害を負ったとする事案につき、被告は、「Xの本件事故による受傷を否認し、衝突時の車両の損傷が極めて軽微であることを主張するとともに、損害保険料算出機構の事前認定でXが本件事故以前に複数の交通事故で保険金を取得していることを主張し、本件事故によるXの受傷に疑問を呈する」が、「低速度追突事故の場合にもむち打ち症が発生しないとはいえないとの指摘があり、むち打ち症の発生原因として「頭部の急激な後屈を止めるために後頸部の筋群が反射的に過緊張・収縮したり、後頭部や頸部をヘッドレストレイントで打撲したときなどに軽微な筋断裂や少出血が発生することの方が多いと考えられる」との指摘があることも踏まえると、本件事故による衝突の衝撃が比較的軽微であるとしても、Xに頸椎捻挫が生じないとまでは言い難い」とし、「Xが本件事故時に助手席の子をかばう動作をしたことが認められ、この点も併せ考慮すると、Xは、本件事故により、少なくとも頸椎捻挫の傷害を負ったものと推認するのが相当である」とW同様に本件事故による受傷を認定した。
②
Xの素因減額につき、Xは、「本件事故前年の平成29年2月22日、交通事故に遭い、同年8月31日、頸椎捻挫及び腰椎捻挫について後遺障害診断を受け、本件事故当時もその症状が残存していたことが認められ、本件事故による頸椎捻挫の症状と平成29年の事故時の症状が同一部位に関するものであること、Xについては、平成29年の事故当時、既に椎間板ヘルニアの所見が認められていたことも考慮すると、Xの本件事故後の頸部の症状については、平成29年の事故後の頸椎捻挫とともに生じたものと認めるのが相当であり、これを素因減額の対象とするのが相当である」として、35%の素因減額を適用した。
新しい判例-①:交通(対人・後遺障害認定・後遺障害逸失利益・好意同乗減額)
17歳男子作業員の自賠責5級2号高次脳機能障害を不適切な行動がたまには認められる程度と9級10号認定しセンサス男子同学歴全年齢平均を基礎収入に50年間35%の労働能力喪失で逸失利益を認めた
福岡地裁:令和2年7月3日判決
事件番号:平成29年(ワ)第3839号 損害賠償請求事件(控訴中)
判決要旨
①
信号交差点を被告Y自動二輪車に同乗して進行中、対抗の右折被告Z乗用車に衝突され、脳挫傷、びまん性軸索損傷等の傷害を負い、自賠責5級2号認定の高次脳機能障害を残す17歳男子原告の事案につき、「画像所見上、原告の両側前頭葉及び左側頭葉先端部に脳挫傷が生じていることは明らかであり、原告に広範性脳萎縮や脳室拡大が生じているとはいえないものの、局在性の軽度脳損傷が認められる」他、原告には、「受賞後、JCS2桁、GCS12点以下の意識障害が6時間以上継続しているものの、これには鎮静薬の影響を考慮する必要がある」とし、「原告には、神経心理学的検査で明らかな異常所見までは指摘されていない」が、他方で、原告は、「本件事故以前から、父に対する感情抑制に問題があり、暴言や暴力があったところ、本件事故後、父に対する感情抑制が更に効きにくくなり、暴言や暴力の程度がひどくなったほか、職場上司(義理の叔父)に対してもイライラし、職場上司にも暴力を振るったこと、原告は、その後も、父や祖母、妹に対する感情抑制が効きにくい状態にある一方、安定剤を服用して就労を継続しており、職場や友人関係では大きな問題を生じていないことが認められる」として、「原告は、本件事故による脳外傷に伴い、高次脳機能障害を残存した」と高次脳機能障害の残存を認定した。
②
高次脳機能障害の程度につき、原告は、「本件事故による脳外傷に伴い、高次脳機能障害の後遺障害が残存したものと認められ、労災補償における高次脳機能障害の認定基準でいうところの「意思疎通能力」、「問題解決能力」、「作業不可に対する持続力・持久力」及び「社会行動能力」のいわゆる4能力のうち、「社会行動能力」が障害されているものと言える」が、「原告は、K会社においては、現時点までに大きな問題を生じていないところ、その背景には、薬剤の効果の他に職場であるK会社の理解があるものと考えられる。そして、原告のK会社における作業(測量補助業務)がG会社における作業(金属加工業務)よりも比較的単純であること、原告がG会社では脱抑制の症状を呈していたこと、原告が日常生活において父、妹、祖母に対する易怒性が持続していることも総合考慮すると、原告には、障害に起因する不適切な行動がたまには認められるという程度であり、自賠責保険における高次脳機能障害の等級認定に当たっての基本的な考え方でいうところの「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」に該当するといえ、後遺障害別等級表9級10号に該当する」と9級10号高次脳機能障害を認定した。
新しい判例-7:交通(対人・収入認定・後遺障害認定・後遺障害逸失利益)
男子自営大工の後遺障害を自賠責同様頚部痛等の併合14級と認め、基礎収入を日額7,115円として5年間5%の労働能力喪失で後遺障害逸失利益を認定した
福岡地裁:平成28年10月27日判決
事件番号:平成27年(ワ)第1739号 損害賠償請求事件(確定)
判決要旨
①
①
代行運転手X運転の運転する乗用車の右後部座席に同乗中の男子自営大工の原告は、車線変更してきた被告運転の乗用車に衝突され、頚椎捻挫などを負い、自賠責併合14級後遺障害認定を受ける事案につき、「平成26年2月6日時点において、原告に頚部痛、腰痛が残存したこと、E病院医師において、これらの症状については今後、症状改善の見込みがないとの認識を有していたことが認められる。よって、原告には頚部痛及び腰部痛がそれぞれ後遺症として残存し、これらのいずれもが「局部に神経症状を残すもの」(障害等級第14級9号)に該当することにより、障害等級併合第14級に該当するものと認めるのが相当である」と自賠責同様併合14級後遺障害を認定した。
②
男子自営大工の原告の後遺障害逸失利益につき、「原告が本件事故前にDのもとで大工として稼働していたこと、平成25年2月から本件事故発生日までの間に、Dから合計168万7,500円が支給されていたこと、Dと原告との間には雇用契約が締結されておらず、Dから原告へ支給された金銭から源泉徴収がなされていなかったこと、その後、原告が同金額から経費を控除した金額として101万0,400円を取得金額として申告したことが認められる」として、「原告の基礎収入は日給7,155円と認めるのが相当である」と認定し、5年間5%の労働能力喪失で認めた。
新しい判例-14:交通(対人・後遺障害逸失利益・慰謝料)・過失相殺(四輪車対歩行者)
工事現場で交通誘導中に酒気帯び運転の被告者に衝突された原告が「過失相殺をするほどの過失があったとは認め難い」と認定した
福岡地裁:平成28年11月9日判決
事件番号:平成27年(ワ)第2391号 損害賠償請求事件(確定)
判決要旨
①
工事現場で交通誘導に従事中の原告が酒気帯び運転の被告車に衝突された事案につき、酒気帯び状態で被告車を運転中の被告は、「進路左側路外にあるファミリーレストランに気をとられたため、前方を注視せず、本件工事の現場ば目前に迫って初めて、同現場の手前に設置された看板及び交通誘導員(原告)に気付いた」とし、他方、原告は、「三角コーンの内側において、自らの安全を確保しながら、交通誘導に従事しており、交通事故をじゃっ起するような行動等に及んだ形跡が認められないことに照らせば、本件事故は、専ら被告の前方不注視を怠った過失により発生したというべきであって、本件事故の発生に関し、原告に過失相殺をするほどの過失があったとは認め難い」と原告の過失を否認した。
②
右膝痛から自賠責12級13号後遺障害を残す警備会社勤務の58歳女子原告の後遺障害逸失利益につき、「原告の症状固定時から満67歳に達するまでの年数(8年)が、平均余命の約2分の1である15年よりも短いことに鑑みれば、原告の労働能力喪失期間を15年とするのが相当である」として、事故前年実収入を基礎収入に14%の動労能力喪失で認定した。
③
慰謝料算定につき、「被告が、酒気を帯びた状態で被告車を運転し、本件事故をじゃっ起したと認められること等本件にあらわれた一切の事情を併せ考慮すれば、本件事故による傷害慰謝料は185万円とするのが相当である」とし、「後遺障害慰謝料は、315万円とするのが相当である」と認定した。
新しい判例-14:交通(対人・収入認定・死亡逸失利益)・過失相殺(四輪車対四輪車)
1車線道路の上り坂頂上付近での被告車との衝突は被告が道路中央付近を徐行なく走行が事故の要因とし被害者Bの酒気帯び運転の疑いも事故発生に影響は考えがたいと過失相殺を否認した
福岡地裁小倉支部:平成27年11月27日判決
事件番号:平成26年(ワ)第600号 損害賠償請求事件(確定)
判決要旨
①
急な勾配のある1車線道路の上り坂をB運転、妻A同乗して走行中の原告乗用車と対向してきた被告貨物車の衝突につき、「本件事故の地点は頂上のすぐ東側ということになり、Bは、原告車両を徐行していたとしても、衝突回避が可能な地点における被告車両の存在を認識することができなかった疑いが強いというべきである」とし、本件事故は、「被告車両が本件道路の中央付近を徐行することなく走行していたことが本質的要因となって発生したものというべきであり、Bに徐行義務違反や左端走行義務違反があったと認めることはできない」として、過失相殺については、「本件事故後、Bの体内からアルコールが検出されたことが認められ、Bの酒気帯び運転の疑いが残るところであるが、仮にそのような事実があったとしても、上記に照らすと、それが本件事故の発生可能性に具体的な影響を及ぼしたとは考え難く、本件事故についての過失と評価するのは相当ではない」とBの過失相殺を否認した。
②
居酒屋及び人材派遣業を営む61歳女子家事従事者Aの死亡逸失利益算定につき、事故から約2ヵ月後の夫Bの死亡以後も、相当長期にわたり家事労働従事を継続することを前提とした基礎収入を認めることは相当性を欠くとし、Aの居酒屋経営等による収入額は証拠不明であり、無職のBとの生計が維持されていたと考えられるが、その詳細も証拠上明らかではない等から、月額13万円を基礎収入として、生活費控除率30%で、平均余命の約半分の14年間につき死亡逸失利益を認定した。
新しい判例-⑨:交通(対人・死亡慰謝料・固有慰謝料)・過失相殺(四輪車対歩行者)
2歳児の店舗駐車場での轢過死は被害者側の過失1割と認定し、固有慰謝料含め死亡慰謝料2,800万円認めた
福岡地裁:平成27年5月19日判決
事件番号:平成25年(ワ)第2793号 保険代位金請求事件(甲事件)(確定)
平成25年(ワ)第2813号 損害賠償請求事件(乙事件)
判決要旨
①
スーパー駐車場内の走行スペースにパンを食べながら座り込んでいた2歳男子Aが、被告普通乗用車に礫過され、死亡したとする事案につき、被告は、「被告車両の運転席に座ってその前方を確認したところ、人影は視認しえず、被告車両に備え付けられていた衝突防止ソナーも鳴らなかったため、左斜め前方向に向かって発進したところ、Aに衝突し、同人を礫過した」と事故態様を認め、被告はAを礫過したことを争うが、「被告車両が発進して停止した後被告車の下からAが発見されたこと」等から、「被告車両がAを礫過したことに疑いの余地はない」と認定した。
②
過失割合につき、本件事故は、「ひとたび幼児と自動車との間で事故が発生すれば、幼児の生命を奪う等の重大な結果をもたらすことは、当然に予想される」等から、被告は、「このような大きな危険が内包する被告車両を発進させようとする以上、被告車両に乗り込み、これを進行させるまでの過程において、周囲に幼児の有無を確認した上で、発進進行までの間に幼児が死角に入り込んでしまう可能性を念頭に置き、その有無・動静に注意しておく義務があるところ、被告は、これを怠ったまま漫然と被告車両を発進させた過失がある」とし、他方、「被害者側である原告においても、事故の発生防止を車両運転者の注意にのみ委ねるのではなく、Aの動静に注意しておく義務があったところ、これを怠ったものと認められる」として、過失割合は、「被告が9、原告が1の関係にある」と被害者側の過失1割を認定した。
③
2歳男子Aの死亡慰謝料につき、本人分2,400万円を認め、両親各144万4,444円、兄111万1,112円の固有慰謝料を認め、合計2,800万円認定した。
当該事件は、西日本新聞にも取材され取り上げられるなど、安全システムの過信に警笛を鳴らすものとなりました。
新しい判例-⑨:交通(対人・休業損害・後遺障害逸失利益)
40歳男子派遣労働者の12級左膝内側半月板断裂等の後遺障害逸失利益を事故前3年間の平均年収を基礎収入に67歳まで認めた
福岡地裁:平成27年2月26日判決
事件番号:平成26年(ワ)第2223号 損害賠償請求事件(確定)
判決要旨
①
乗用車を運転し停止中、被告乗用車に正面衝突され、左膝内側半月板断裂等から自賠責12級13号後遺障害を残す症状固定時40歳男子派遣労働者の原告につき、原告には、「後遺障害について12級13号との認定があることから、原告の労働能力喪失率を14%と認める」とし、事故前約3年間の平均年収を基礎収入に、労働能力喪失期間を67歳までの27年間として、後遺障害逸失利益を認定した
②
左膝内側半月板断裂等から自賠責12級13号後遺障害を残す症状固定時40歳男子派遣労働者の休業損害につき、入院期間中の15日間は100%、通院期間の340日間については、「通院に1日中かかるわけではないこと…症状固定日の直前には週4日、1日8時間の勤務ができる状態にあったこと」等から、「通院期間中に得ることができた本件事故前の収入の40%の限度で休業損害が発生した」として、事故前実収入を基礎収入に休業損害を認定した。