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改正保険業法施行迫る
改正保険業法の施行が5月29日に迫っております。
以前このコラムで、保険募集人の新たな義務(意向把握義務・情報提供義務)について取り上げましたが、私も先日、保険法を専門とされる早稲田大学の大塚教授が講師をされた改正保険業法セミナーに参加する機会がありましたので、再度この点について取り上げたいと思います。
今回の法改正により保険募集に対する行為規制として、意向把握義務、情報提供義務が導入されました。
今回の法改正の背景には、保険商品の多様化、募集チャネルの多様化、代理店の大型化などがあげられていますが、保険募集比較・推奨サイトに対する規制という視点もあります。
今回新たに整備されることになった情報提供義務、意向把握義務ですが、これについてまず重要なのは、意向把握義務といえそうです。
情報提供義務を軽視するわけではありませんが、情報提供義務における情報は
- 顧客が保険商品の内容を理解するために必要な情報
- 顧客に対して注意喚起すべき情報
- 保険契約者等に参考となるべき情報
などの提供が必要とされています。
しかし、そもそもこれまでの募集人の方々は通常この情報提供について、十分になされているのが現状であると思われますし、契約概要、注意喚起情報を記載した書面等を用いてしているものと思われます。
意向把握義務
重要なのは意向把握義務です。
当然、これまで保険の募集人の方々は、保険契約者の意向を無視して契約をしてきたわけではなく、契約者の意向を確認して、それに沿った保険を推奨して契約をしてきたことでしょう。
しかし、これまでの「意向把握」といえば、保険会社が作成した形式的な質問が複数記載されてあるような「意向確認書」などを用いることも多くあったと思います。
金融庁から保険会社に対する要請とまさに現場で契約締結をする保険代理店とのギャップから生まれたこの「意向確認書」ですが、今回の保険業法改正では、この意向確認書以上の深いレベルでの、具体的な意向を把握し、その上で、把握した意向に基づく情報提供が求められている形になります。
意向把握義務が実際にどの程度まで求められるのかというのはケースバイケースでありますし、このたび新たに規定された義務であることからも、そのルーツである適合性の原則に関する裁判例等から検証していく必要があります(私としても今後検証していきたいと思います)。
そして、今回の講演では、これまでの保険代理店に関する裁判例から考えるに、日頃契約者と身近に接し、各種保険の手続を代行したり、保険料の徴収の事務を担っている保険代理店としては、信義則上、その過程で知り得た情報に基づいた保険内容を実現するように務めるべき義務を有している(前橋地裁高崎市部平成8年9月5日判決を参考とした見解)とも言えるのではないかという話も出ました。
例えば、保険代理店と自動車保険の契約者で普段の会話から、
- その子供が成人すること
- 免許も取ろうとしている
- その子供が契約者である親の車を運転しそう
ということを、知り得た場合には、契約者が「運転者年齢条件特約」を外すという意向があることを想定し、そのことについての情報提供を行わなければならない、というレベルで意向把握義務が要求される可能性があります。
実際に交通事故にかぎらず、保険については、意向の把握、情報の提供をはじめきめ細かな対応ができるのは現場の保険代理店の方々です。
これまでにない保険代理店業界への法令遵守の要請が来ている今、コンプライアンスと契約者への最大限のサービスを両立していくことが求められています。
2016.02.15掲載
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