むちうちは治療により完治する方も多いですが、数ヶ月経っても痛みが残存してしまう方もいらっしゃいます。
そのような場合には、神経症状の後遺障害として14級9号が認定される可能性があります(12級13号という可能性もありますが、骨折がない場合、ほとんど認定されません)。
他方で、物損の修理金額が低く軽微な事故と扱われかねない場合や、整形外科を受診せず整骨院でのみ治療を受けている場合などには、後遺障害が認定されないばかりか、治療費すら支払ってもらいない可能性もあります。
そこで、むちうちで後遺障害認定を受けるための注意点について解説します。
むちうちが発生するような受傷状況であったのかが重要になります。
衝突した際の車のスピードのみならず、正面衝突なのかはたまた追突によるのかなど、受傷状況、車の損傷状況から、むちうちの症状が発生するのが相当であるといえるかがポイントです。
たとえ症状が軽く後遺症が残りそうにないと感じる場合であっても、事故直後は症状が直ちに発生せず数日して痛みが出てくる場合もあります。
そのため、事故直後、車両の修理をする前に、弁護士に相談することは、今後の流れや、どのような行動をとればよいのか、を知る上でも重要でしょう。
特にクリープ現象による追突やミラー同士の接触など、軽微と捉えられる事故の場合には、保険会社が事故と怪我との因果関係を否定、すなわち「事故で怪我をしていない」という主張をしてくる可能性があります。
これを「受傷否認」といいます。
車の修理費が安い場合には保険会社に軽微な事故と判断されて受傷否認を主張される可能性が高く、弁護士が介入しても賠償額の増額を実現できないおそれがありますので、注意が必要です。(受傷否認について詳しくはこちらをご覧ください。)
事故直後から通院しているのか、どの程度の頻度で通院しているのか、整形外科に通っているのか、整骨院に通っているのかなどの治療状況により後遺障害の認定が下りる可能性に違いが生じます。
特に、整形外科に通わず整骨院のみに通院していた場合では、治療費を支払ってもらえないケースもありますので注意が必要です。
また、むちうちの場合、保険会社が軽傷とみているケースが多く、突然治療を打ち切ってくる場合が多いので注意が必要です。
しかしながら、一定期間通院をしなければ後遺障害の認定は困難です。
打ち切りを言われた場合はもちろんですが、打ち切りを言われる前であっても、保険会社との間で弁護士による交渉が必要になります。
打ち切りと言わせないための通院方法や、受診の仕方など、弁護士に相談できることは多くあります。
後遺障害が認定されない「非該当」と、後遺障害が認定された14級9号では、賠償額に約200万円の差が出る(※主婦の場合)ため、後遺障害として認定されるか否かは賠償額にも大きな違いが生じます。
後遺障害が認定されないと後遺障害慰謝料、逸失利益は認められません。
しかも、弁護士の交渉力で、上記金額をどの程度獲得できるかに差が生じるのが現実です。
後遺障害が残らない形で治療が終了するのが依頼者のためには最善であることはもちろんですが、認定されるべき後遺障害が認定されず、また認定されたとしても、本来得られるべき補償が得られないということはあってはなりません。
また、交通事故の件数を多く扱っていることを示している法律事務所は多数ありますが、大量の事件処理により裁判基準より低額の基準で和解に応じているケースも多くあると聞きます。
そのために、当事務所では、後遺障害等級認定サポートや、基本的に訴訟前の示談の段階でも、可能な限り裁判基準に近い金額で和解するという姿勢で対応しています。
むちうちの場合、後遺障害の認定のポイントは、前述した「受傷状況」と「治療状況」の他に、「症状の推移」「回復の困難性」があります。
少し難しい話ですが重要な部分ですので、簡単にご説明します。※ご相談に来られた際には、サンプル書面をもとに、詳しくご説明しますので、ご安心下さい。
事故直後から、症状固定に至るまで一貫して、痛みやしびれなどの具体的な症状が出ているか否か、またそれが診断書に記載されているかが重要です。
そして、痛みやしびれが出ているだけでなく、この自覚症状が受傷箇所に整合するものであるかどうかもポイントとなります。
ですので、医師にカルテ、診断書上の記載をしてもらうことが必要になります。
ところが、一般の方がカルテ・診断書を見ても、自覚症状が受傷箇所に整合しているのかよく分からないケースも多いので、むちうちなどの診断書やカルテを読める弁護士に相談する必要があるでしょう。
むちうちは、MRIなどで客観的所見が表れにくいため、後遺障害の認定を難しくしています。
しかし、MRIなどの画像で出ないから、客観的所見がないわけではありません。
少し専門的になりますが、深部腱反射テスト、筋萎縮の測定などの客観性の高いテストを受け、所見が出ているか否かという点が重要なポイントです。
以上のようなポイントを総合的に考慮したうえで、後遺障害の認定について判断されます。
ただ、全ての事情がそろっていなければ認定がなされないわけではなく、被害者ごとに異なる個別の事情を考慮したうえで判断されるため、やはり弁護士に相談すべきです。
当事務所では、むちうちの多数の事例での経験、比較の中で、認定に向けての治療方針、認定の可能性について、個々の依頼者に応じて、アドバイスをしています。
なお、後遺障害認定は事故から6ヵ月が経過すれば誰でも請求できますが、その認定が出るには3ヵ月程度かかる場合もあるため、認定が下りる可能性が低い事案で、後遺障害申請をして、むやみに解決を遅らせるなどはしてはならないため、正確な見通しをもてる経験、判断が必要です。
当事務所では、多数の経験の中から認定が下りる可能性、本人の意思を確認した上、後遺障害申請すべきか否かについてのアドバイスをしています。
通院する病院については、救急搬送された病院から、近所の整形外科を紹介され通院しているなどの場合が多いと思われます
残念ながら、病院によっては、患者が症状を訴えているのにまともに取り合ってくれない病院や、保険会社から治療費の打ち切りの話があった時にも保険会社の味方と言わんばかりに患者に治療終了を進めてくる病院もあります。
また、後遺障害申請の際には、後遺障害診断書を医師に作成していただく必要がありますが、的外れな内容を記載されてしまう場合や、検査をしてほしいと頼んでいるにもかかわらず行ってもらえない場合があります。
そのため、通院する病院(ここが後遺障害診断書を作成していただく病院になることが多いです)をどこにするかは後遺障害の認定においては非常に重要です。
また、後遺障害診断書の作成も被害者ごとに応じたポイントを突いて記載しなければ、認定は受けられません。
当事務所では、単に、必要な検査結果がされているかという点だけではなく、具体的な所見に応じたテスト結果が出ているか(例えば、ヘルニアの所見が出ているが、その部位に応じた場所にしびれなどの自覚症状が出ているか)などを細かく検討のうえ、可能な限り認定が受けられる診断書の作成についてアドバイスをしています。
仮に、しっかりとみていただけない医師にあたった場合で、転院が困難である場合にも、医師にむちうちにおける後遺障害診断書作成のポイントについての書面を送付したり、直接説明させていただく場合もあります。
また、既に説明したとおり、整形外科の医師による診断を受けず、整骨院にしか通っていない場合には、後遺障害認定を受けられる可能性は低いです。
「むちうちはどの弁護士に頼んでも結果が同じ」ではありません。
認定をとるためにも、適正な賠償額を獲得するためにも、頼む弁護士により結果に大きな差が生じるのが現実です。
当事務所では、むちうちの後遺障害認定、医学的知見を熟知した実績豊富な弁護士が対応します。
適切な治療、認定、賠償金の獲得に向けた正しい見通しによる計画を立て、それを実行してきた豊富な経験があります。
当事務所では、少しでも、交通事故でむちうちに苦しむ方の力になれればと思っていますので、お気軽にまたなるべく早くご相談下さい。
むちうちとは、交通事故等による外部からの衝撃により、頸部(首)がムチのようにしなったことで過度に伸縮した結果、頸部の筋肉、靭帯、椎間板等の軟部組織や骨組織が損傷することを総称した用語です。
むちうちは、交通事故で発生する典型的な怪我で、交通事故においては半数以上がこの傷病名になります。
令和5年に全国で交通事故により負傷された方は約33万8000人いらっしゃいますが、そのうち、約17.9万人、全体の約53.1%が頸部(首)を負傷された方です(警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況 損傷部位別・状態別死傷者数」)。
むちうちの診断名は、「頸椎捻挫・頸部捻挫・頸部損傷・頸部挫傷・外傷性頸部症候群」等と記載されるのが通常です。
交通事故後、頭・首・肩・腕・背中等の痛み、めまい・しびれ・知覚異常等に陥り、自分の診断書に前述のような病名が記載されている方は、いわゆるむちうち損傷を受けたものということができます。