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歯の加重障害について
交通事故で歯が折れたのですが、認定票では加重障害だとして自賠責保険金が減額されていました。どういうことですか?
歯の後遺障害では、事故以前の虫歯や抜歯などが等級認定に影響を与えます。
少々複雑な話になりますが、以下で説明します。
事故によって歯を喪失したか、歯肉から露出している部分を4分の3以上失って治療を行った場合(これを「歯科補綴」といいます)に、歯の後遺障害が認定されます。
そして、歯科補綴を行った歯の数が3、5、7、10、14本以上の場合はそれぞれ14、13、12、11、10級の後遺障害が認定されます。
ただ、歯の後遺障害が特殊な点は、歯科補綴を行った歯の数のカウント方法にあります。
例えば、事故以前に虫歯で歯を3本抜いて義歯を入れていた方が、事故でさらに2本の歯を失ったとします。
この場合は事故以前の歯科補綴3本と、事故による歯科補綴2本を合計して、5本の歯科補綴(13級)が認定されるのです。
なお、事故以前の歯科補綴は、虫歯や物理的損傷、インプラントのための抜歯などの理由を問わず、客観的に歯が喪失しているか、4分の3以上失っているか否かで判断されます。
もっとも、先の例でいうと、事故以前の3本の歯の喪失(これを「既存障害」といいます)は、事故とは当然無関係です。
このため、5本の歯科補綴(13級)の自賠責保険金139万円から3本の歯科補綴(14級)の自賠責保険金75万円が差し引かれ、64万円しか支払われないことになります。
これを加重障害というのです。
しかしながら、事故以前に歯科補綴をしていたからといって、常に被害者が不利になるわけではありません。
例えば、次のような例があります。
事故以前に2本の歯科補綴をしていた方が、事故で1本の歯科補綴をした場合は合計3本の歯科補綴となり、14級が認定されます。
しかし、2本の既存障害は、3本以上の歯科補綴という14級の認定基準に該当しませんので後遺障害非該当となります。
このため、14級の自賠責保険金75万円から2本の既存障害分が差し引かれず、満額が支払われることになるのです。
このように、事故による歯科補綴だけでは後遺障害に該当しなかったものでも、事故以前の歯科補綴のために後遺障害が認定されることがあるのです。
この他にも、歯の後遺障害には少々難解な論点(慰謝料・逸失利益など)が複数存在しますので、事故で歯を損傷された方は弁護士に相談されることをおすすめします。