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画像診断の種類・方法の解説
画像診断の種類・方法
レントゲン
レントゲンは、X線で撮影する検査方法です。
X線は大抵の物質を透過しますが、中にはX線を吸収する物質もあります。
X線を吸収するかどうかは、物質の密度や物質を構成する原子の数などにより異なります。
密度の高い物質や原子数が多い物質はX線を吸収しやすく、反対に、密度が低い物質や原子数が少ない物質はX線が透過しやすいです。
そして、X線が物質に吸収されると、その部分はフィルムなどに白く表れ、反対に、X線が物質を透過してフィルムなどに到達すると、その部分は黒く表れます。
そのため、フィルムなどの上に表れた白黒の濃淡(グレースケール)から、撮影した部位の密度や硬さの違いが分かるのです。
例えば、骨は、密度が高く、原子番号が比較的大きいカルシウムを多く含むため、X線を吸収しやすく、その結果、白く表れるのです。
肺は空気を多く含むため、X線が透過しやすく、その結果、黒く表れます。
そして、筋肉や肝臓などは、X線をある程度吸収するため、灰色で表れます。
CT
(1) 得意分野
骨、脳、肺、腹部
(2) 撮影方法
CTもX線により撮影します。
レントゲンがX線を一方向から照射して撮影するのに対し、CTでは、検査台の上に寝た患者の体の周りをX線照射器が回転しながら照射して撮影します。
これによって得られた画像データをコンピュータ処理することにより、体の断面図や立体画像を構築することができます。
(3) 造影剤
CTでは、造影剤が使われることがあります。
静脈に射たれた造影剤は、体内を巡り、血管から血液とともに染み出していきます。
その染み出していく様子を撮影して、病変などを発見するのに利用されます。
(4) CT値
CT値は、CT撮影された物質の密度を表現するものです。
単位はHUで、水が0HU、空気が-1000HU、固い骨が1000HUと設定されています。
つまり、X線の吸収されやすさがCT値で表現されるのです。
例えば、脂肪は-100~-50HU、大脳皮質(灰白質)は30~40HU、筋肉や肝臓は30~60HU、通常の骨は250~1000HUとされています。
(5) ウインドウレベル(WL)とウインドウ幅(WW)
CTの機械は、ものにより異なりますが、-2000HUから4000HUの幅のCT値を記録できます。
データ上では白黒の濃淡が細かく表れるのですが、人間の目が見分けられる灰色の種類は、16段階程度しかないといわれています。
そのため、そのまま観察したのでは、病変を見落としてしまう危険性があるのです。
そこで登場するのが、ウインドウレベルとウインドウ幅です。
ウインドウレベルとウインドウ幅を使うことで、見たい部位のCT値の周辺だけを灰色にして観察することができるのです。
ウインドウレベルを中心に、ウインドウ幅の範囲で灰色の画像を表示させるという使い方をします。
具体例として、大脳皮質を詳細に観察したい場合を考えてみましょう。大脳皮質のCT値は30~40HUですので、まず、ウインドウレベルを35HUに設定します。
そして、ウインドウ幅を、例えば下に50HU、上に50HUと設定します。
こうすることによって、-15HU以下の部位が全て真っ黒になり、85HU以上の部位が全て真っ白になり、大脳皮質だけを灰色の画像で観察できるようになります。
また、ウインドウ幅を調整することで、見え方が変わってきます。
ウインドウ幅を狭くすると、コントラストがつきやすくなり、CT値の違いが僅かな場合でも、区別できるようになります。
反対に、ウインドウ幅を広くすると、観察できるCT値の範囲も広がりますが、ぼんやりとした像になります。
MRI
(1) 得意分野
関節、靭帯、脳、脊髄、骨盤腔内臓器
肺のように空気を含む臓器は、不得意です。
(2) 特徴
組織間コントラスト分解能に優れている。
体内の水分子を画像化する。
縦、横、斜めと、自在な断面を観察できる。
(3) 撮影方法
強い磁石と電波を利用して、体内の水素原子の発する磁気を観察して検査します。
具体的には、まず、①強力な磁場を与えて体内の水素原子核(プロトン。H+)が行っている歳差運動(コマのように回転する自転運動)の方向を一定方向に揃えます。
次に、②電波(RFパルス)をかけて水素原子核の全てを一定方向に傾けます。
そして、③かけていた電波を切ることで①の状態に戻ろうとする際の戻り方の緩急を記録し、④水素原子核の密度と、①の状態への戻りやすさを白黒で表現します。
部位や組織によって水素原子核の密度、戻り方のスピードが異なるため、その違いが白黒の濃淡で表現され、体内の様子が再現されます。
なお、磁力が大きい(テスラの数値が大きい)装置であるほど、精密な画像を得やすくなります。
MRI画像といっても、画像は1種類ではありません。
以下では、各種撮像法の一部を簡単に解説します。
(4) T1強調画像とT2強調画像
T1強調画像では、水が黒く(低信号)写ります。そのため、CTに似た画像になります。
反対に、T2強調画像では、水が白く(高信号)写ります。この画像では、多くの病巣が白く写るため、病変の発見に有用とされます。
T1強調画像とT2強調画像は、基本的には白黒が逆転しています。
しかし、すべての部位・組織で白黒が逆転するわけではありません。
空気はそもそも水素原子核をほとんど含みませんので、キャッチすべき信号がなく、T1強調画像でもT2強調画像でも黒くなります。
脂肪は、T1強調画像では白く、T2強調画像では灰色(白)になります。
また、骨髄も脂肪の塊なので、脂肪と同じように表れます。
・T1強調で高信号を示すもの
① 脂肪
② 血腫(メトヘモグロビン)
③ 高タンパク液 など
・T2強調で高信号を示すもの
① 炎症性変化
→T2強調で高信号がある場合、新しい外傷の可能性がある
② 良性・悪性の腫瘍
(5) T2*(スター)強調画像
磁場の乱れに敏感な撮像法です。
磁場の乱れに敏感ですので、出血があった場合、血中のヘモグロビンが小さな磁石となって僅かに乱れた磁場をキャッチできます。
例えば、脳で磁場が乱れているという信号がある場合、脳挫傷の疑いがあります(ただし、脳挫傷ではない事例もあります)。
つまり、脳出血を捉えやすい撮像法なのです。
(6) プロトン密度強調画像
水素原子核の分布を見るもので、僅かな水の検出に用いられます。
半月板損傷の診断に有用です。
半月板は元々水分が少ない部位なので、損傷により水分が入ることで、水分が検出され、半月板が損傷しているのではないかと判断されるのです(ただし、変性に過ぎない場合でも検出されます)。
(7) FLAIR画像(フレアー画像、水抑制画像)
基本はT2強調画像であり、水の信号を抑制したものです。
水に埋もれて目立たなかった病変の観察や、微小な出血・挫傷の観察に有用です。
(8) 脂肪抑制法
文字どおり、脂肪から発せられる信号を抑制した画像です。
この画像を見たときに、関心領域が黒くなっていれば、その部位は脂肪だということが判明します。
脂肪は水分を含むため、T2強調画像では灰色(白)に写り、出血や病変と区別がつきません。
そこで、脂肪抑制法により、関心領域が脂肪かどうかを確認する必要があるのです。
また、脂肪を抑制することで、脂肪に隠れていた病変が見えるようになり、病変を際立たせる効果もあります。