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無保険車傷害保険とは?
無保険車傷害保険とは、自動車事故で、相手方が対人賠償保険等にはいっていない、あるいは保険等には入っていて相手方も免責条項に抵触する(加害者が故意に起こした事故等)などで有効に相手方の任意保険が使えなかったり、ひき逃げなど、そもそも加害者が不明であったりする場合に、被害者自身の加入している保険で保険金が支払われるものです。
無保険車傷害保険は、それ単体で販売されている保険ではなく、自動車保険に付保された特約です。
「相手方の対人賠償責任保険がない、または適用されない場合に支払われるもの」というその役割から、相手方に請求できる適正な賠償基準が、自分の保険会社から支払われる、と考えがちですが、保険会社によっても、その適用範囲、支払われる基準が異なります。
今回は、保険会社ごとに異なる大きな2つの相違点について簡単にまとめておきます。
適用対象傷害
これは、後遺障害が残った時に限り、無保険車傷害保険が使えるのか、後遺障害が残らなくても、無保険車傷害保険が使えるのかという点です。
これについては、損保会社大手4社(東京海上日動、損保ジャパン日本興亜、あいおいニッセイ同和、三井住友海上)の自動車保険を調査対象としました。(社名等平成28年執筆時点)
そのなかで、損保ジャパン日本興亜の自動車保険(「THEクルマの保険」2015年10月版)については、後遺障害が生じた場合もしくは死亡した場合に限定して、無保険車傷害保険が適用されるとしています(もっとも支払われる保険金については、傷害部分についても支払うとされています。)。
損害額決定方法
怪我や後遺障害による損害額には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準という基準があり、一般的に自賠責保険より任意保険基準、任意保険基準より裁判基準のほうが金額は高いとされています(下記例参照)。
無保険車傷害保険金の計算において、東京海上日動の自動車保険(「トータルアシスト」2016年4月版)は人身傷害保険算定基準(任意保険基準)での計算とされています。
その他3社の自動車保険(あいおい:「タフ・クルマの保険」2016年4月版、三井住友:「GKクルマの保険」2015年10月版、損保ジャパンについては上記保険)については、原則として任意保険基準ですが、裁判等によって決まった場合にはその基準(裁判基準)となるとされています。
例
後遺障害等級14級の慰謝料基準
自賠責保険基準:32万円
裁判基準:110万円
※任意保険基準はあくまで保険会社内部の基準ですので、一般的な数値基準があるわけではありません。
少し細かい話ですが、注意が必要なのは、無保険車傷害保険が人身傷害保険の特則となっていることなどから、裁判基準で支払う場合においても、人身傷害保険基準で算出された損害額(任意保険基準)を支払限度額とされており、労災や自賠責保険金からの支払額が無い場合等は、裁判基準で計算したとしてもメリットがない場合があります。
まとめ
以上のように、無保険車傷害保険と一言で言っても、上記の点以外にも、付保形態(人身傷害保険の特則なのか、無保険車傷害保険特約として独立しているのか)、適用される被保険者の範囲等の問題や、無保険車傷害保険で弁護士費用を請求できるか、人身傷害補償保険との関係など、法律上難しい問題点もありますので、利用する際は注意が必要です。
なお、この記事は特定の保険商品を推奨するものではなく、上記で紹介した保険商品はあくまで、保険会社の中の商品の一部ですので、「あの会社の無保険車傷害保険はすべてこうだ」というわけではありません(例えば、東京海上保険の自動車保険は「トータルアシスト」以外の商品もあり、同商品でも契約日によって約款の内容も異なります。)。
また、今回の説明は、あくまで無保険車傷害保険に限った説明ですので(例えば、人身傷害保険の適用により、裁判基準と同様の請求ができる場合もあります。)、その点はご注意ください。