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交通事故によるむちうち症に関する傷害慰謝料の改定


交通事故によるむちうち症に関する傷害慰謝料の改定

 つい先日、民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準2016という本(赤い本)が出版されました。

 この本は交通事故に関して、裁判になった際に、どのくらいの金額の損害賠償を認めているのかという裁判所の判断の傾向について分析し、まとめているものです。

 この本は、裁判となった際に裁判所に認められるであろう損害額についての見通しを立てるために使用されるなど、実務において非常に大きな役割を果たしています。

(1)裁判所の慰謝料に関する考え方

 裁判所は、傷害を受けたことに対する慰謝料(以下では「傷害慰謝料」と言います」)に関して、むちうち症で他覚症状がない場合と、それ以外の場合に分けて考えています。

 そして、裁判所はその傷害慰謝料の判断について、入院期間や通院期間を考慮します。

(2)従来のむちうちの入通院期間の考え方

 従前は、むちうち症で他覚症状がない場合の、裁判所の考え方として、この入通院期間について、「その期間を限度として、実治療日数の3倍程度を目安とする」とされていました。

 つまり、3ヵ月の通院期間で、週に1回しか通院できなかった方は、12回の通院となるため、12×3の36日分に相当する、1ヵ月6日の通院期間と同程度にしか、傷害慰謝料を認めてもらえないとされていました。

 そのため、お仕事で忙しいなどの理由から満足に通院することができなかった方には、十分な傷害慰謝料が認められにくいものでした。

(3)新しい傷害慰謝料の基準

 しかし、今回、裁判所の傷害慰謝料の基準について、新しいものへと改定がなされました。

 「通院期間が長期に渡る場合は、症状、治療内容、通院頻度を踏まえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることある」というものです。

 従前の基準との違いは下線を引いた部分です。

 この基準に照らせば、上記で例に挙げた3ヵ月の治療期間で週に1回しか通院できなかった方も、3ヵ月の通院期間を基準とする傷害慰謝料が認められる可能性が高くなります。

 今後、保険会社と交渉をする際は、この基準を根拠にすることになっていきます、最新の情報を常に入手しておくことの大切さを、改めて実感いたしました。

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