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賠償金に大きく影響?〜最高裁が後遺障害逸失利益の定期金賠償を認めました
はじめに
令和2年7月9日、最高裁判所は、後遺障害の逸失利益について、定期金での賠償を認める判断を下しました。
今後の賠償実務に大きな影響を与えそうです。
事案の概要
4歳の男の子が道路を横断していたところ、加害者の運転する大型貨物自動車に衝突され、脳挫傷、びまん性軸索損傷等の傷害を負い、3級相当の高次脳機能障害の後遺障害が残存し将来的な労働能力を100%喪失しました。
被害者とその両親は、被害者が働き始める18歳から67歳までの間に取得すべき収入(逸失利益)について、定期金によって賠償することを加害者に求めました。
1審、2審とも定期金での賠償を認め、最高裁もこれを認める形で判断がなされました。
定期金賠償と一時金賠償
定期金賠償とは、交通事故賠償で通例となっている一時金賠償(一回払いでの賠償)とは異なり、毎月あるいは毎年一定額を定期的に支払う賠償方法のことを指します。
両者は賠償金の総額に大きな違いがあります(以下は労働能力を100%喪失した場合です)。
一時金賠償の場合、将来的な損害についても、賠償時に一括で支払いがされることから、中間利息が控除されてしまいます。
逸失利益でいえば、労働能力が喪失するとされる年数に相当するライプニッツ係数が収入にかけ合わされることとなります。
本件で請求がされた49年の喪失期間に対応するライプニッツ係数は18.1687(令和2年4月1日以降発生の交通事故の場合は25.5017)であり、単純に年収の49倍が賠償してもらえるというわけではなく、中間利息控除を考慮して年収の18.1687倍に総額としては抑えられてしまいます。
他方、定期金賠償の場合、将来の損害は都度定期金として支払いがなされることから、中間利息の控除がありません。
そのため、金額の変更なく49年間定期金の賠償を受け取った場合、年収の49倍に相当する金額を受領することができたことになります。
定期金賠償で請求したほうが有利になる?
では最高裁も認めたことだし、今後は後遺障害が残った場合にはすべて定期金賠償で請求していくほうが有利かというと、一概にそうとも言い難いです。
後遺障害の内容・程度が時間の経過とともに変化し、就労できるまでに回復した、あるいは就労ができなくなったといった事情が将来的に生じた場合、定期金の金額を変更することが相当と考えられます。
そのため、加害者は被害者の状態を定期金の支払いが終わるまで常に気にかけ、ときには調査を行い、必要があれば被害者の後遺障害の変化を理由に判決の変更を求める訴えを提起する場合もあり得ます(民事訴訟法117条)。
このように、加害者との債権債務関係は、定期金の支払いが終了するまで続きます。
これは被害者やそのご家族の方にとってひとつの大きなストレスにもなりうるといえます。
また、加害者が大手の保険会社に加入しており、判決時点ではその資力に問題がないとしても、将来的に倒産に追い込まれる可能性も0ではありません。
最終的に適切な賠償金を支払ってもらえるかどうかは、最後の定期金の支払いが終わるまで確定しないのです。
そして、定期金賠償事例もほとんどないため、上記のような問題につき保険会社や我々弁護士も手探りの状態であることが正直なところであり、事案の蓄積が待たれます。
おわりに
交通事故の解決は、賠償金の総額だけの話ではありません。
事故の内容、被害者の方の負われたお怪我の程度、被害者・加害者のそれぞれの状況等を考えながら解決へと進んでいくこととなります。
重い後遺障害を負ってしまった、賠償方法について疑問がある等、交通事故によるお困りごとがございましたら、ぜひ一度たくみ法律事務所にご相談下さい。