- 福岡交通事故被害者相談TOP>
- 事務所コラム>
- 弁護士が徹底解説!大津園児死亡事故にみる直進車と右折車の事故の過失割合
弁護士が徹底解説!大津園児死亡事故にみる直進車と右折車の事故の過失割合
はじめに
2019年5月8日、滋賀県大津市で、交差点を直進しようとした車が対向車線から右折してきた車と衝突し、そのはずみで歩道にいた保育園児の列に突っ込み、園児2人が死亡、14人がケガを負った痛ましい事故が発生しました。
この事故のように、交差点では、右折車と直進車が衝突する事故(いわゆる「右直事故」)がよく起こります。
大津市の事故では、直進車を運転していた女性は刑事責任を問えるだけの過失は認め難いとして不起訴処分となった一方で、右折車を運転していた女性は自動車運転死傷行為処罰法違反で起訴されました。
つまり刑事上は、園児を轢いた直進車よりも直進車に接触した右折車側に大きな過失がある、という判断になりました。
もっとも、損害賠償請求において問題となる民事上の過失割合は、刑事における過失とは必ずしも一致しません。
今回は、青信号で交差点に進入した直進車と右折車の事故における過失割合について解説します。
過失割合の決定方法
過失割合は、事故類型ごとの基準値が示された過失相殺基準表や過去の裁判例などを参考にしながら、個々の事案に応じた割合が認定されます。
過失割合の認定・判断をする上で参照されるのが、「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本です。
この本には、右直事故や追突事故などの事故類型ごとに基本の過失割合が定められています。
また、事故が起きた時間帯が夜間であるとか、スピード違反があったなどの事情が修正要素として定められています。
過失割合は、まずは「別冊判例タイムズ」の中で当該事故と同じか類似する事故類型を探して基本の過失割合を定め、その上で、事故類型ごとに設定された修正要素を適用して決定されることが多いです。
右直事故(双方青信号で交差点に進入)における基本の過失割合
直進車・右折車ともに青信号で進入して右直事故が起きた場合の基本の過失割合は、直進車20:右折車80です。
この過失割合は、道路交通法上、右折車に対して交差点を直進等しようとする車両の進行を妨げてはならない義務が課されている一方、直進車にも前方不注視等の何らかの過失があることが多いことを念頭に設定されたとされています。
修正要素
直進車・右折車ともに青信号で交差点に進入して右直事故が起きた場合における修正要素は、以下のとおりです。
直進車の事情
①既右折
直進車が交差点に進入する時点で、右折車が右折を完了しているか、それに近い状態にあった場合
②道路交通法50条違反
交差点の先が詰まっており、そのまま進行すれば交差点内で停止することになるのに、直進車が交差点内に進入した場合
③15km以上の速度超過
直進車が時速15km以上の速度違反をしていた場合
④30km以上の速度超過
直進車が時速30km以上の速度違反をしていた場合
⑤著しい過失
直進車のドライバーが携帯電話で通話しながら走行していたなどの著しい過失がある場合
⑥重過失
直進車のドライバーが酒酔い運転や居眠り運転をしていたなど重大な過失がある場合
右折車の事情
⑦徐行なし
右折車が徐行していなかった場合
⑧直近右折
直進車が停止線を超えそうな地点まで来ているのに右折車が右折を開始したような場合
⑨早回り右折
右折車が交差点の中心近くを通らずに早回り右折をした場合
⑩大回り右
右折車があらかじめ道路の中央に寄ることなく大回り右折をした場合
⑪合図なし
右折車が右折の合図をせずに右折した場合
⑫著しい過失・重過失
右折車のドライバーが携帯電話で話をしながら運転していたとか、酒酔い運転をしていたなど、著しい過失又は重大な過失がある場合
さいごに
直進車が交差点を通り過ぎようとしたところに真横からぶつけられた場合など、直進車が右折車を避けようがない状態で事故が起こることもあります。
本当に直進車が右折車を避けようがない場合には、直進車には事故発生という結果を回避することができない以上、過失がないと考えるべきです。
大津市の事故でも、直進車に接触した右折車側に大きな過失があるという判断が妥当であると考えられます。
しかし、示談交渉の場では、事故対応をしている保険会社が「別冊判例タイムズ」の基準とは異なる過失割合を認めることは少ないです。
また、裁判において「別冊判例タイムズ」の基準と異なる過失割合が認められるには、ドライブレコーダー映像や警察で作られた事故状況を示した図(見分状況書)などの証拠があり、それらの内容が自身の主張する過失割合に沿うものである必要があります。
裁判をしてまで過失割合の主張を貫くべきか、それとも「別冊判例タイムズ」の基準に従って示談すべきかについては、どのような証拠があって、その証拠によればどのような主張が可能かなど、様々な考慮が必要になります。
ご自身の遭われた事故の過失割合が一般的にどのような割合になるか、裁判まで争ってご自身が主張する過失割合が認められるかどうかなど、過失割合について分からないことなどございましたら、まずは弁護士に相談してみてください。