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損害額計算書のサンプル事例2
損害額計算書|サンプル事例2
傷害慰謝料について
- 傷害慰謝料は、裁判所基準229万円の1.2倍相当額である274万8,000円とすべきである。
- 裁判所基準における傷害慰謝料については、長期にわたって苦痛の大きい状態が継続した場合や、症状の回復が思わしくなく重度の後遺障害が残った場合などにおいて、基準額の2~3割の増額がなされる。
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被害者は、本件事故によって、第3,4胸椎破裂骨折、左右第3肋骨骨折及び第3胸椎棘突起骨折等、複数の部位において骨折が生じ、また、左眼球結膜下血腫、顔面打撲等の傷病も負った。
上記骨折等に起因して、長期間に渡り疼痛に苦しんだうえ、ADL障害も継続し、不自由な生活を強いられた。
- また、被害者は長期間にわたる入通院を経ても、事故前の身体に戻ることなく、後遺障害等級8級という重度の後遺障害を残すに至った。
- 以上のような被害者の状況からすれば、基準額につき2割の増額とするのが妥当である。よって、傷害慰謝料は、274万8,000円とすべきである。
逸失利益について
基礎収入について
基礎収入は、事故前年の平成21年男子全年齢平均賃金529万8,200円とすべきである。被害者は、本件事故当時31歳と若く、将来、努力により多額の収入を上げる蓋然性があった。
そして、本件事故による後遺障害が、後記のとおり生涯において残存することを考慮すれば、実収入額を基礎収入とすることは妥当ではなく、男子全年齢平均賃金を基礎収入とすべきである。従って、本件では、基礎収入を529万8,200円とすべきである。
労働能力喪失率について
被害者は、後遺障害等級8級の認定を受けており、労働能力喪失率は45%とすべきである。
脊柱にかかる後遺障害については、運動障害と変形障害とを区分した上で認定基準が設けられており、脊柱の変形障害は、それが脊柱の支持機能・保持機能を害し、労働能力に影響を与えるものである点に着目したものである。
そうすると、原則として、対応する労働能力喪失率表どおり、45%の労働能力喪失率を認めるのが相当である。
そして、被害者には脊柱変形障害に起因する背部痛、脊柱部痛及び右側胸部痛等の各症状が現に出現している。
また、被害者は、事故当時●●県において営業職を務めていたが、本件事故による傷病の影響で営業職の仕事が困難となり、▲▲県への転勤を伴う事務職へと配置転換を受けた。
事務職への配置転換後も、上記各症状から能率的に作業をこなすことが困難で、多大なる業務上の支障が生じている。
以上からすれば、本件においても、原則どおり、45%の労働能力喪失率を認めるのが相当である。なお、本件と同様に脊柱変形につき後遺障害等級8級の認定を受けた事案(添付裁判例 横浜地裁平成20年8月14日判決・自保ジャーナル第1773号)においても、45%の労働能力の喪失が認定されている。
従って、本件では労働能力喪失率を裁判所基準である45%とすべきである。
労働能力喪失期間について
労働能力喪失期間は、34年間とすべきである。被害者は、第3,4胸椎破裂骨折により椎体が圧潰され、この脊柱変形に由来する背部痛等の各症状が出現している。
この脊柱変形が元に復することはないから、これに伴う背部痛等の各症状は生涯持続することが明らかである。
そうすると、被害者の労働能力は、就労可能年数(67歳)に至るまで復元・回復されるものではなく、同年数に至るまでの期間(34年間)、労働能力の喪失が継続するものである。
従って、労働能力喪失期間は34年間とすべきである。
後遺障害慰謝料について
基本額について
裁判所基準に基づき、後遺障害慰謝料830万円を基本額とすべきである。
増額事由について
上記基本額に加えて、慰謝料を50万円増額すべきである。
- 被害者は、本件事故当時、●●県にて営業の職についていた。しかし、本件事故によって営業の仕事が困難となり、▲▲県への転勤を伴う事務職への配置転換がなされた。
- 本件事故に遭わなければ、被害者はそれまでどおり、●●県での営業職を継続できたにもかかわらず、不幸にも本件事故に遭ってしまったが故、それまでの生活の本拠からの移転を余儀なくされ、また、営業職のキャリアまでも途絶えさせられることとなった。
これらによる被害者の精神的苦痛は、上記基本額において十分に評価しつくされているものとは言えない。したがって、これらを慰謝するため、上記基本額に加えて、慰謝料を50万円増額すべきである。
過失割合について
- 被害者の過失は5%である。
- 本件事故は、青信号進入での単車直進・四輪車右折の事故類型であり、別冊判例タイムズ第16号の【126図】に類似し、その基本過失割合は単車15:四輪車85となる。
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しかし、本件においては、加害者は、交差点の中心直近までよらずに右折を開始している(いわゆる早回り右折)。また、すでに被害者が交差点に進入していたにもかかわらず、加害者は右折を開始している(いわゆる直近右折)。
本件における上記加害者の過失を考慮すれば、被害者の過失は5%を超えるものではない。