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紛争処理機構に調停を申し立て、後遺障害14級から併合12級に変更することができました
はじめに
バイクを運転していた被害者が、自動車との交通事故により胸骨骨折等の傷害を負った事案に関して、自賠責保険の判断では、胸部痛等の症状による14級9号の認定にとどまりましたが、紛争処理機構に対し調停を申立てた結果、当初の狙い通り、併合12級の認定に等級変更されました。
自賠責保険の判断
本件において、被害者は、骨折部の癒合が完治することなく途中で停止し、癒合不全の状態で症状固定となりました。
そのため、被害者には、骨折部の疼痛や肩の可動域制限等の症状が残存し、これら症状は、骨折部の癒合不全に由来すると考えられましたので、後遺障害等級としては12級の認定がなされるものと予想していました。
しかしながら、自賠責保険の判断は、14級9号というものでした。
その理由は、骨折部に癒合不全が認められるものの、疼痛が他覚的に証明されているとはいえないため、12級ではなく14級にとどまる、また、胸骨骨折は肩の可動域制限の原因とはなり得ないというものでした。
この自賠責保険の判断は、癒合不全に対する評価を誤っており、適切でないと考えましたので、自賠責保険に対して異議申立てを行いましたが、異議申立てでも判断は変更されませんでした。
紛争処理機構の判断
そこで、自賠責保険に対する異議申立てによる等級変更を狙う方針を改め、紛争処理機構に調停の申請をすることにしました。
自賠責保険に対する異議申立てに回数制限はありませんが、紛争処理機構による判断は、裁判外における最終判断となるため、後遺障害の等級変更を狙う上ではラストチャンスとなります。
紛争処理機構には、骨折部の癒合不全が分かる画像、疼痛や肩の可動域制限が癒合不全に由来する旨の主治医の意見書、胸鎖関節部の骨折が肩関節の可動域制限になり得る旨指摘する医学文献等を添付した上で、申請しました。
その結果、我々の主張が認められ、自賠責保険による14級9号との判断は変更され、肩の可動域制限や骨折部の疼痛等の症状による併合12級の判断に覆りました。
どうして結果は変更されたのか
紛争処理機構によりなぜ自賠責保険の判断が変更されたのかは、変更に至る理由が詳細に述べられるわけではないため、定かではありません。
しかし、変更理由がどうであれ、結果として、14級9号と併合12級とでは、賠償額に雲泥の差をもたらします。
現在の交通事故賠償実務では、後遺障害等級の如何が最終的な賠償額に大きく影響する仕組みとなっているためです。
そのため、今回異議申立てによっても結果が変わりませんでしたが、そこで諦めることなく、紛争処理機構への申請にまで進み、粘り強く等級の妥当性について争ったことは、結果として非常に良かったといえます。
おわりに
今回等級が覆った事例をご紹介させていただきましたが、何より重要なことは、1回目の後遺障害申請であり、その申請に向けての準備です。
自賠責保険に対する異議申立てや紛争処理機構への申請により結果が変更されることは制度上当然予定されているのですが、数としては、結果の変更がなされないことの方が圧倒的に多いためです。
後遺障害申請は、誰がいかなる方法でやっても結果が変わらない事例も少なくありませんが、他方で、自賠責保険独特の認定要件や書類審査という現行の等級認定システム上、経験的・専門的知見に裏付けられた周到な事前準備に基づく申請により、結果が左右されることも少なくありません。
申請の主体や方法により被害者に残存する後遺症が変化するわけではないため、現状の実態は本来おかしなことではありますが、残存する後遺症に見合った適切な等級認定がなされるためには、後遺障害等級に精通した弁護士の介入が求められているのが現実です。
執筆者弁護士 岩間龍之介
福岡県久留米市出身。
交通事故被害者からの相談に真剣に向き合い、加害者側との間に入ることで精神面でも支えとなれるよう最大限の努力をいたします。