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死亡事故で戸籍が見当たらない被害者の内縁関係者の固有の慰謝料が認められました
はじめに
交通事故により亡くなられた被害者の遺族の方による裁判について、判決が出され、確定しました。
この件の特殊な点として、被害者の方には戸籍が見当たらないという事情がありました。
ご遺族は、被害者の旦那様と娘様でしたが、いずれも内縁関係で被害者の方との血縁関係はありませんでした。
被害者の方が自身の過去や身分を語りたがらず戸籍も出せなかったために、婚姻関係や養子縁組などにより法律的な親族関係を築くこともできませんでした。
しかしながら、被害者と旦那様は結婚式を挙げて夫婦関係を築いたり、娘様が生後間もないころから実の親同様に世話をするなど、法律上の親族関係がないことを除けば、何らごく普通の家族と変わらない生活を過ごされてきました。
事故発生からご依頼まで
ところが、交通事故により、被害者の方の命がある日突然奪われるという悲劇が旦那様と娘様を見舞いました。
加害車両の保険会社からは、戸籍等により法律上の身分関係の確認ができないとして、旦那様と娘様に対し賠償をすることはできないとの回答がきました。
そのため、弊所にご相談いただきご依頼いただくこととなりました。
ご依頼後の当事務所の活動
弊所にて被害者の方の名前や、遺品などから考えられうる名前で戸籍調査を試みましたが、被害者の方の戸籍を確認することはできませんでした。
また、警察による捜査によっても、被害者の身元の特定をすることはできませんでした。
弁護士による交渉によっても、保険会社の回答が変わることはないと判断し、早急に訴訟提起を進めました。
裁判での活動
裁判では、被害者の方の長年の生活状況等から、旦那様と娘様とが内縁関係に当たり、被害者の方の死亡によって精神的な苦痛を被り慰謝料を受けるべき立場にあるということ自体に大きな争いはありませんでしたが、その慰謝料額が争点となりました。
内縁関係者に固有の慰謝料額を認めた裁判例は数多くありますが、被害者の方の戸籍がなく相続人が確定できない場合における内縁関係者の固有の慰謝料を認めた裁判例は、弊所で調べた限りでは見当たりませんでした。
先例がないため、目安となるような金額もなく模索しながらの訴訟活動でしたが、ご遺族と被害者の方の関係は法律上の親族関係がないこと以外はごく一般の家族と変わりないものであり、ご遺族の方が被害者の方の死亡によって受けた精神的苦痛は、法律上の親族関係がある場合と比べて何ら変わりがないのだということを、強く主張しました。
相手方は、戸籍により相続人が特定できない以上、相続人が現れる可能性を排除しきれないことを理由に、高額な慰謝料は認められないと主張してまいりました。
判決
和解による話し合いの中で、裁判官からは、相手方の主張のように、被害者の方の戸籍が存在しないとまでは言い切れず、相続人が現れる可能性を排除しきることはできないが、裁判官としては現れる可能性はほとんど0に近いと考えている、これまでの生活状況からも可能な限り高額な慰謝料の認定をしたいという言葉をいただきました。
事案の性質上、相手方は和解に応じることはできないとのことでしたので、判決に至りましたが、判決においては、ご遺族合計で900万円という、固有の慰謝料額としては高額な判断がなされました。
おわりに
事件を振り返ると、依頼者であるご遺族の方と訴訟提起前や期日の度に、じっくりとお話しを伺うことができた案件であったと感じています。
被害者の方とご遺族との深いかかわりや、家族を失った悲しみ、加害者に対する憤りなどを伺うと、法律など関係がないと思えるほどの家族としての愛を感じました。
戸籍がないということも、ご遺族の方はもちろん被害者の方さえどうしようもできなかった事情であるとは思いますが、やはり賠償や裁判の世界においては、法律に基づいて判断せざるを得ません。
その中でも、ご遺族の方から伺った事情を基に主張したことで、高額な固有の慰謝料を認定してもらえることができたと考えています。