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交通事故において、タイヤの摩耗は過失割合にどう影響するのか
先日、バイクと自動車の交通事故の事件が裁判で解決できました。
その事件では「タイヤの摩耗と過失相殺」が主要な争点になりました。
事例の紹介
本件事故は、一時停止規制のある交差点でのバイクと自動車(一時停止規制道路)の事故で、自動車が交差点に侵入したことにより、バイクが避けることができず、スリップの上衝突し、バイクの運転手が怪我をしてしまった事例です。
私は、怪我をしたバイクの運転手から依頼を受けました。
相手方保険会社は、一時停止規制のある交差点で、自動車は一時停止をしたことから、基本過失割合は35(バイク)対65(自動車)となり、それに加え、今回の事故は、バイクのタイヤの摩耗が大きく影響しており、過失割合に影響する、基本過失割合から10%を上乗せするとして、過失割合は、45(バイク)対55(自動車)であると主張してきました。
確かに、被害者のバイクのタイヤの溝はほとんど摩耗しており、完全にタイヤの「山」はない状態であり、タイヤが摩耗していればグリップ力が弱まりスリップしやすく急停止が困難となることは常識であるといえます。
しかし、こちらとしては本件事故時に路面は乾燥しており、タイヤの摩耗は本件事故における制動距離には影響を与えない旨主張しました。
つまり、タイヤの溝というのは、路面が濡れている時に、路面とタイヤの隙間にある水をかき出して排水する機能により、停止しやすくなる(制動距離を短くする)ためにあるものであり、本件のように路面が乾燥している時には、タイヤの摩耗は制動距離に影響を与えないとして、調査会社を通じて取得した路面状況時におけるタイヤ摩耗の影響についての論文も証拠提出した上で、争いました。
ちなみに同論文によれば、乾燥路面では、むしろタイヤが摩耗することで接地面積が大きくなることから、若干であるが、摩擦係数は大きくなる(制動距離は短くなる)と記載がありました。
その結果、裁判所からタイヤの摩耗については過失割合に影響しないとして、その前提での和解案が提示され、和解で解決することになりました。
なお、本件では最終的に過失割合は、25(バイク)対75(自動車)として、自動車一時停止の基本過失割合よりこちらに有利な数字で和解しました。
本件事故で、自動車は一時停止線の手前で停止していたものの、本件事故現場の交差点は見通しが非常にわるく、停止線で停止したとしても、交差点内が見渡せず、一時停止線での停止したことをもって、本件事故現場で一時停止したものとして過失割合を判断することはできないとされたためです。
おわりに
ちなみに、タイヤの摩耗は整備不良であることは間違いがなく、本件事案を持って、路面乾燥時あれば常にタイヤの摩耗が過失割合に影響しないとか、雨天時のような路面湿潤時には、タイヤの摩耗が過失割合に必ず影響するというわけではありません。
しかし、安易に、保険会社の主張を鵜呑みにすることなく、具体的事例に応じて、適切な主張をしていくことが重要です。
また、【解決実績】タイヤの摩耗が過失であるとの保険会社主張を退け、有利な条件で和解した事案にて当該事件の活動のポイント等を掲載しておりますので、併せて、ご覧ください。