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傷害慰謝料の「長期」とは?

交通事故に遭い骨折し、半年間通院(実日数18日)したのですが、加害者側から「通院頻度が少ない」として慰謝料減額の主張をされています。

加害者側の主張する「通院頻度が少ない」との主張は、「民事交通事件訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)の記載に則ったものだと考えられます。

この「赤い本」は日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している書籍で、交通事故損害賠償において裁判所や弁護士、保険会社が必ずと言っていいほど参照するものです。

そして、「赤い本」では傷害慰謝料について以下の記載があります。

(傷害慰謝料は入通院期間を基礎に算定するが、)通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある」(平成28年赤い本170ページ・以下「3.5倍ルール」といいます)。

加害者側の主張としては、慰謝料算定のための通院期間は、半年(この場合の傷害慰謝料は116万円)ではなく、18日×3.5≒2ヵ月(傷害慰謝料:52万円)である、ということになります。

では、この記載で条件とされている「通院が長期」とは具体的にどれくらいの期間を想定しているのでしょうか?

これに対して明確な回答をしている裁判例は見当たりません

しかし、「赤い本」と同じ日弁連交通事故相談センターが発行している「交通事故損害額算定基準―実務運用と解説―」(通称:青本)では、以下の記載があります。

通院が長期化し、1年以上にわたりかつ通院頻度が極めて低く1ヵ月に2~3回程度の割合にも達しない場合(中略)、通院実日数×3.5が修正通院期間となる

青本の記載も実務において大きな影響力を有していることに鑑みると、「長期」とは「1年以上」であるという主張に合理性があると考えられます。

また、通院期間が1年以上にわたる場合でも、通院期間に応じて傷害慰謝料を算定するのが原則であり、3.5倍ルールはあくまで例外です。

加害者側から上記のような主張を受けた場合は、上記のような根拠を挙げた上で、傷病や症状の重さ、通院頻度が少ない理由などを個別具体的に主張し、精神的苦痛が大きかったことを反論していくことが重要です

ちなみに、今回ご紹介した赤い本の慰謝料基準は平成28年版の最新のもので、平成27年以前の基準より被害者に有利なものとなっています。

死亡慰謝料やむちうち用の傷害慰謝料基準も同様に被害者有利に変更されています。

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